Tamagawa Training Camp 2015 supported by UPSETレポート(1)
Tamagawa Training Camp 2015 supported by UPSET
© 立花 佳世
6月27、28日。プロ選手の合同トレーニングキャンプが今年も開催された。
梅雨の到来が終わったかと思えば、一気に猛暑日が襲う。これから訪れる本格的な夏に対し
て期待と不安が入り混じる時期。株式会社PHYSIOFLEXの主催(代表取締役 井上亮馬)が
統括する催し。正式名称は” Tamagawa Training Camp 2015 supported by UPSET”である。
玉川大学男子バスケットボール部の協力の元、今年で3回目を迎える本プロジェクト。
元々は、東日本大震災に伴って活動場所を失い、コンディションを落としていくプロ選
手に対して、いつ来るともわからないが、来るべき復帰時期に備えた身体作りをサポート
する事を目的として井上氏が始めた取り組みに端を発する。
オフシーズン、特に所属チームとの支配下から離れ、次なる所属チームを探して活動中の
選手にとって、この時期にもトレーナーと契約をし、質・量ともに万全なトレーニングを
積める選手はプロ選手と言えども非常に稀である。まして、伸び盛りの若手選手にとって
は、意欲と体力があっても、絶対的な機会が少ない。トップリーグ所属選手のパフォーマ
ンス、特に、意欲に満ちた若手選手の下からの突き上げこそが、国のバスケットボールレ
ベルを引き上げる要因になる。
自分が御世話になり、人生の中で喜怒哀楽の多くを経験した、この競技に対して恩返しをし
たいという気持ちは常に抱いていた。ならば、プロ選手を支える取り組みをする事で、バス
ケット界に貢献できる事があるのではないか。震災の影響で苦しむプロ選手のサポートをし
ながら井上氏が抱いた危惧であり目標であった。
酷暑ともいえる昨今の真夏への、期待と不安。冒頭に書いた。プロ選手には、気候とは別で、
その2つの感情が入り混じるのが、この季節である。新シーズン、選手によっては新しいチーム
への期待。結果を残してやろうという野心から溢れる希望。契約をしたチームでプレータイムや
役割を勝ち取れるかどうか、これから始まる勝負への不安。プロが厳しい世界である事は知ってい
る。試合中のみならず、練習中のワンプレーがその選手のキャリアを左右する事を知っている。そ
して、それを、導くのは、オフの過ごし方も大きく関わってくる。その時期だからこそ、自分の仲
間や、賛同者と力を合わせ、プロ選手をサポートしたい。井上氏の狙いはそこだった。
■玉川大学男子バスケット部にとっても挑戦の場に
© 立花 佳世
そこから、故郷である沖縄県の同郷、琉球ゴールデンキングスなどでストレングストレーナ
ーとして実績を挙げた大城氏が趣旨に賛同し、同氏の母校でもある玉川大学バスケットボール
部の協力を頂けることが決まる。以来、過去2年間、同大学のバスケットコート、ウェイトト
レーニング場、会議室/柔道場などの施設を借用。トレーニングセッション終了後はプロ選手と
のゲームの機会も設けた。既にシーズンがスタートしており、万全のコンディションの学生選
手。これから始まるシーズンに向けて、コンディショニングを整える段階のプロ選手。だが、
バスケット選手として対峙する以上、学生選手に負けるわけにはいかない。プロとして学生選
手を圧倒しなければならない。プロ選手の意地。この2つが上手く融合した。
初年度こそ、慣れない対戦相手に遠慮がちは学生チームであり、プロ選手の寄せ集めチームに
圧倒される。だが、年を重ねる中で、まず、プロ選手に気持ちで立ち向かっていく選手が増え
た。勿論、高さ、技術、経験の前に粉砕される事も多かった。だが、徐々にプレーを成功させる
ケースが増えてきた。昨今では、(コンディションや様々な状況の違いはあるにせよ)プロ選手
を相手に自分の腕試しをしようと血気盛んな選手が増えてきた。
野心があれば、日頃の準備にも精が入る。身体作りへの意識も高まった。初夏の時期、挑戦できる
相手を得た若者たちのウェイトトレーニングの質と量は高まったという。大学側にとっても、秋の
リーグ戦へ向けた、本格的な夏を迎える前の時期にプロ選手と対戦する機会は貴重な様子。プロ選
手の環境整備をする事を通じての大学生世代の機会創出。主催者である井上氏も、想像以上の連携
に手応えを感じる。
「秋の大学リーグへ向けた戦術的な準備段階に入る前の鍛錬期間で、プロ選手のフィジカルコンタクトの
強さや、競技に取り組む姿勢を肌で感じれる機会は非常に貴重。初年度の学生は今年で4年生。プロ選手
の当たりの強さを体感した事で、ウェイトトレーニングへの意欲も高くなった。非常に良い刺激になって
いる」
とは、玉川大学男子バスケットボール部HCである林氏の弁である。
■3年目の取り組み
© 立花 佳世
過去2年間、チーフトレーナーである大城氏の指導の元、ウェイトトレーニングやフロアコンディショ
ニング、及び、現TKbj大阪エヴェッサ元安陽一ACによるスキル指導をベースとしたトレーニングプロ
グラムを組んできた。今年は新しい取り組みをスタートさせた。
「選手が思い描く理想の選手像と、チームが求める役割。それに対しての身体的な資質のギャップを
知って欲しい」
上記の理念から、各選手の特性を分析する為の体力測定を実施。 宮崎シャイニングサンズでの経験も
持つ上原氏、琉球ゴールデンキングスでトレーナーインターンの経験を持つ島袋氏、バスケット界で
幅広く活動する知念氏らのストレングストレーナーも参加し、各セッションを担当する。スタッフの
確保により、より多くの選手にプログラムを受講して頂く事が可能となり、玉川大学の男子バスケ部、
高等部・中等部の男女バスケ部も参加。プロを含む全ての選手が最終日のお昼までにはトレーナーか
らのフィードバックを受けられる仕組みにもなっている。
身長、体重、体脂肪、ウィングスパンの測定から始まり、Long Jump(跳躍力)、MBスロー(メディ
シンボールを投げる)、反復横跳び、Tドリル(敏捷性と下半身の筋持久力のテスト)を行う中で、
学生選手がプロ選手の測定中の動作に驚きの声を上げ、自らもプロ選手の数値を超えるべく、果敢
にトライをする。同じ空間で、バスケットボールを愛する人間同士、向上しようと意欲を持つ者同士
が織りなす空間には、非常に前向きなエネルギーが溢れていた。
その後、昼食と共に休憩を挟み、ウェイトトレーニングセッションへと移行するのであるが、この時間
ではメディカルトレーナーが選手の身体をケアする為に万全の準備を整えてスタンバイをしている。前
述の島袋氏、そして、今シーズンよりリンク栃木BREXとトレーナーとして契約をした五十嵐清氏、及
び、協賛企業である まなぶ鍼灸接骨院の樋口氏が担当。この配置は、主催者である井上氏の強い意向が
反映されたもの。曰く
「質の高いトレーニングと、しっかりとしたケア。それに栄養補給と休息が伴ってこそのトレーニング。
どうしてもケアの部分がないがしろになってしまう。それは、プロもアマも同じこと。ケアの大切さを
実感し、日ごろの活動にも生かして欲しい」との事である。自身も怪我に苦しんだ競技人生だった(現在
も競技は続けている)。高みを目指す選手には万全の状態でバスケットに打ち込んでもらいたい。
■ウェイトトレーニングセッションからピックアップゲームへ
© 立花 佳世
その後、ウェイトトレーニングのセッションへと移行する。詳しい内容は割愛するが、自己流のトレーニ
ングでは曖昧になりがちな事、身体の中心部から力を発揮する為のトレーニングの説明と実践がスタート。
選手の表情にも、苦悶が浮かぶ。
その後、トレーニングの王道ともいえる腕立て伏せの正しい(より効果的な)姿勢でのトレーニングの指
導、スクワットをする際の姿勢(足首、股関節の柔軟性チェックや、動作時にしっかりと必要部位を使え
ているかの入念なチェック)などのレクチャーが入り、濃密な90分間が過ぎる。
各種のトレーニングでは身体に負荷を掛けるわけなので、どうしたって選手の表情は歪む。それでも、ト
レーニングの合間には、ウェイトトレーニングルームに配置する4名のトレーナーに対して質疑応答があ
る。曖昧なままにトレーニングを消化するのではなく、血肉にしようと感覚を研ぎ澄ます。アスリートなら
では、細部にこだわる姿があった。
その後、コートへと移動して最後のセッションへ。血気盛んな玉川大学男子バスケットボール部の学生と
のピックアップゲームを実施。ここで素晴らしいパフォーマンスとリーダーシップを見せたのはPGのポ
ジションで出場をした小林大起(TKbj群馬)と粂川岳勤(NBLつくばとシーズン途中で選手契約を交わす)
の両選手であった。
スピード、スキルを駆使しながら、即席チームの良さを出そうと知略を練る。得点力のある池田、鳴海、八幡
(全てNBDL東京八王子トレインズ)を生かしつつ、インサイドで起点となった李ビン武にバランスよくボール
を配給。また、前線からの激しい守備はゲームを引き締めるスパイスとなった。
「NBDL東京Zでも実績のある粂川選手は勿論ですが、昨シーズン、十分なプレータイムを勝ち取れたとは言えな
かった小林選手の成長には驚きました。年齢としては大学生と同世代。非常に若い。早くからプロに挑戦している。
昨年度は先輩プロ選手の中に混じり、様子を見ながらプレーしていました。初々しさと同時に、少しだけ頼りなさ
もあった。1年ぶりに再会し、リーダーシップを発揮するプレーには目を見張りました」
主催者である井上氏も嬉しそうに若手選手の成長を語る。
同時に、チームとしての抜群のまとまりと、学生ならではのスピード感を見せる玉川大学の素晴らしいプレーに流れ
を持っていかれる時間もあったのは事実。流れが悪い中、プロの意地を見せようと、プレーの強度が強くなる。そう
はさせないと、大学生が対応する。プレーの応酬は非常に見応えがあった。
10分のピックアップゲームが6本終了後、大城トレーナーの指導下で入念なクールダウンをして初日が終了。希望する
選手は島袋、五十嵐の両メディカルトレーナーのマッサージを受けて翌日へと備える。
© 立花 佳世
<2日目のレポートへと続く>
(参考)
■1日目の参加選手
粂川 岳勤(NBLつくば)
池田 裕介(15~ NBDL八王子トレインズ)
鳴海 亮(15~ NBDL八王子トレインズ)
八幡 幸助(15~ NBDL八王子トレインズ)
小林 大起(14-15~ TKbj群馬クレインサンダース)
松岡 錬(TKbj高松 練習生 チームによる推薦)
李 ビン武(主催者推薦、3×3などに出場中)
■スタッフ
関連リンク