バスケの勉強会(宮城県気仙沼市) Dave Taylor氏の指導者講習会より
【バスケの勉強会(宮城県気仙沼市) Dave Taylor氏の指導者講習会より】
バスケの勉強会
Dave Taylor氏の講演会に参加して
~アメリカバスケの光と闇、アメリカの育成組織、ジョン・ウッデン氏からの学
び、アメリカと日本の育成システム、気仙沼地域、連携を取っている岩手県陸前
高田市、大船渡市などの沿岸地域の育成環境の文化構築について考える~
7月30日(土)早朝より、宮城県気仙沼市にあるアンカーコーヒー マザーポート店
2階にて、宮城県気仙沼市バスケットボール協会の事業として展開されている「第12回
バスケの勉強会」が開催され、アメリカの育成環境、欧州の育成環境の情報共有と共に、
気仙沼市周辺の、よりよい育成環境の構築を考える為の勉強会が開催されました。
また、勉強会の責任者、講師である袖野洸良氏の熱意に賛同し、アメリカ西海岸を中心に
クリニック活動や、NBA選手主催キャンプのディレクター、現在のアメリカの育成環境に警鐘
を鳴らした書籍『THE AAU WASTELAND】を出版されているDave Taylor氏から気仙沼市の
コーチに向けたメッセージ、自身のコーチ哲学を語ったビデオメッセージも届き、勉強会の中
で上映されました。
弊社は、本勉強会でのコンテンツ部分の制作協力や、ビデオメッセージの調整、翻訳などを
通じ、本取り組みに協力させて頂きました。
▼Dave氏と、袖野氏(気仙沼市バスケットボール協会)の出会い
今回、気仙沼市でアメリカの育成環境(の一部、勉強できた部分)を共有し、欧州の仕組み、そして
日本の現状、気仙沼周辺の沿岸地域と照らし合わせて考え、議論をするという取り組みが開催され
た経緯には、袖野氏も気仙沼市から駆け付けた、2016年3月にDave氏(ERUTLUCさんとUPSET
の共催)の指導者講演会が関係している。
かつてよりERUTLUC鈴木代表の書籍を読み、同社の取り組みに気仙沼市のバスケット振興のヒント
があるのではと思っていた事と、「勝利か育成か」という部分に、袖野氏自身、自分の活動の今後の
展開を考える上で非常に重要なトピックスと考えた。
▼育成を標榜したミニバスチームの立ち上げ。運営する中での迷いや葛藤
仙台大学の体育学科を卒業後、聖和学園や、登米高校などで指導をし、現在は教職員の傍ら、気
仙沼市では唯一のバスケットボールクラブ「気仙沼ミニバスケットボール少年団」を設立。JBA公認
C級ライセンスも所有し、宮城県協会の3×3運営事務局や、その他にも様々な形でバスケットボール
に、広く、深く関わっている。
育成世代での勝利のみならず、中学・高校に進学したのちも通用するスキルの習得、トップカテゴ
リーへ挑戦する、市内に関わらず、生涯スポーツとしてバスケットボールを楽しめるよう、先を見
据えた練習カリキュラムや、指導方針を大切に、震災に合い、かつ、宮城県の都心部から離れた気
仙沼市でも、最新のバスケットボール理論で指導を提供できるように、時間を使い、足を運び、勿
論、お金も使い、様々な事を学び、地元選手の気質や、競技経験に合わせた形での、自身の信じる
練習カリキュラムは指導方針を構築してきた。。
▼「勝ちたい」という欲
だが、練習をし、対外試合に参加する中で、選手、コーチ、保護者の間でも、目の前に試合に勝ち
たいという「意欲」が強くなり、ときとして、それが当初の理念に対して迷いを生むことも多く
なった。
気仙沼市の場合、近隣のミニバスチームの大会に出場しようとする、練習試合をしようとしても、
車で片道2時間以上を擁するのはザラであり、遠方まで出向き、試合をするからには、やはり勝ち
たい、という気持ちも芽生えやすい環境でもあった。
勝利への意欲自体は、勿論、悪いわけではない。だが、元々のミニバスケットボールクラブの設立
理念・指導理念を忘れないよう、目の前の勝利の為に、育成世代の選手にとって重要なプロセスや
スキルを習得できるようにするためのコーチとしての配慮・気配りだけは忘れないよう、勝利の為
に、決して、近道をしないように自らを戒めてきた。
何をどこまで教え、試合ではどのような戦術を用いるべきかについて悩み、時として、確固たる理
念と共にスタートしたギャップとの狭間で、正解が見えずに苦しむ日々が続いた。
▼「勝利か育成か」 そのトピックスに惹かれ、講習会へ参加
そんな中であるからこそ、「勝利か育成か」で理路整然として自身のスタイルや思想を打ち出すDave
氏の話を直接に聞いてみたいと思ったようだ。
ジョン・ウッデン氏からDave氏が学んだ事に基づく、様々なエピソード。利己的なコーチが幅を利か
す(こともある)アメリカの育成環境の負の部分(あくまでもDaves氏の私見)などを見聞きし、
Dave氏の信じる指導理念を聴講する中で、様々な発見があった。
当日、指導者講習会が終了後、質疑応答の時間では、ERUTLUC水野指導員の通訳の助けもあり、震災
の事、ミニバスケットボールチームの基本理念、これまでの成果や、悩み、もがいている事実を伝
え、意見を仰ぐ時間を得た。
▼「全ての人を幸せにすることは出来ない」
Dave氏の答えはこうだ。「チームの理念を、改めて、選手、父兄に伝える。そして、なぜ、その考え
を支持するのか、自身の信じる哲学を伝える事だ」その後、袖野氏のヒントになりつつも、また新
しい悩みの種を生まれる言葉を耳にする。「それでも同意を得られないのであれば、チームを去っ
てもらうしかない。全ての人を幸せにすることは出来ないのだから」。
この言葉は、自身の理念を強く発信し、信じる道を突き進む上での覚悟を持つ意味でも大きなヒント
になったと同時に、現在の問題の解決には至らない歯がゆさもあった。前述のとおり、現在、気仙沼
市には袖野氏のミニバスケットボールチームしか存在していない。勝利を重視するチーム、育成を重
んじたうえで勝利を目指すチーム、運動不足を解消するためのチームなど、今後は用途やニーズに
合わせてチームの選択肢を増やすことが求められるが、現在は、そうではない。
もし、ここで理念に対して共有できない選手を排除する方針を採用するのであれば、その選手からミ
ニバスケットボールの機会を奪ってしまう事になる。ここでも悩みが尽きなかった。
▼チーム理念を改めて言語化。コーチ陣で共有。
第一歩として、ミニバスケットボールクラブの活動理念、指導理念を見つめなおし、やはり育成型で
ある事に立ち返りつつ、理念を言語化し、書面でコーチングスタッフ同士で共有をし、改めて活動理
念・指導理念、クラブとしての価値観を見つめなおす時間を設けた。
また、保護者とも、入団当初に標榜していた同意事項を改めて共有し、目の前の試合の勝利の為に、
最も重要な価値観がぶれないように話し合いを設け、さらに信頼関係を構築する作業に努めること
で、新しい一歩を踏み出すことが出来たという手ごたえがあったという。
▼勉強会での展開、育成環境構築へ関心の高いコーチ同士での議論の場に
そのような経緯があったからこそ、、アメリカの育成環境のさらに深い部分がどうなっているか、選手に
はどのような選択肢があるのかを知りたいと強く思い、かつ、勝利と育成に対して明確な方向性と、自
らの主張を持つDave氏の哲学、彼から学んだことを伝えることで、気仙沼市周辺の指導者同士にとって
もよい題材になるという予感があったという。
勉強会では、バスケットボールの歴史、東京五輪での日本チームの戦績など、歴史的な部分からスター
し、Dave氏の活動背景、AAUの基礎知識、Dave氏の考え、講習会を通じて感じた事、様々なエピソード
などを紹介。また、欧州、特にスペインの育成システムなどを参加者に伝える中で、気仙沼地区、提携関
係にある岩手県を含む沿岸地域(陸前高田市、大船渡市など)などまで範囲を広げ、同地域の育成環境
に対して、熱量のあるコーチ同士でどのような貢献が出来るかを話し合い、お互いの意見を聞き、話し
合う機会を得ることが出来た。
<勉強会での講義項目>
・バスケットボールの歴史
・東京五輪での日本代表の戦績について
<Dave氏、AAUについて>
・Dave氏の来歴
・「勝利か育成か」のコラムの背景
・アメリカのジュニア世代のバスケ環境
・AAU(アマチュア アスレチック ユニオン)について
・AAUを扱った映画 Little ballersについて
・KOBEの発言。KOBEの発言に対してジャーナリストの発言
・否定派、肯定派の論争。その論点など。
・Dave氏の書籍「THE AAU WASTELAND」について
・Dave氏からビデオメッセージの翻訳
①気仙沼の皆への挨拶、袖野講師との出会い
②コーチに必要な資質、コミットメントする姿勢
③2種類のコーチ。Dave氏のスタンス。見解。
「育成」を標榜するコーチが行うべきこと、学び続ける姿勢
④MVPはいらない!というDave氏の考え方
⑤気仙沼のコーチへのメッセージ。
<スペインの育成環境について>
※ERUTLUCさん×とうみんさんのスペインツアーなどで講演が開催されたACB
エスティディアンテスの話題を中心に
・エスティディアンテスの実績や背景
・下部組織の仕組み概要、コーチ育成の概要
・日本との比較。日本の競技環境の中で採用しようとした際に、必要なリソースの分析
・バルセロナFCのバスケチームのジュニア育成に関しての資料
また、関東出身で、現在は気仙沼市で働く参加者からは、代々木公園のストリートバスケットボールコート
の存在や、そこで開催されている大会(ALLDAY)などの存在、それが学校の部活動以外の世界からの
バスケットボールとして、同地域の少年・少女に与えている影響に対する意見が報告され、普段は、話が
出来ない部分まで意見交換を交わすことが実現した。
▼気仙沼バスケットボールクラブとのさらなる連動、協力
(※フルオーダー昇華ゲームウェア、弊社にて制作)
現在、講師の袖野氏は、気仙沼バスケットボールクラブや、同協会の仲間共に、子供たちが、将来を見据え、
各年代の中で必要なスキルを習得したうえで、対外試合などでも充実した戦績を残せるよう、クラブ運営の
充実に向けてさらなる情熱を注いでいる。
(参考)
Dave Taylor氏の指導者講習会の開催概要(勝利と育成についてのコラムも掲載)
デイブ・テイラー氏がジョン・ウッデン氏から学んだこと(前編)
デイブ・テイラー氏がジョン・ウッデン氏から学んだこと(後編)
※株式会社ERUTLUC内のレポート記事
気仙沼バスケットボールクラブ
バスケの勉強会への協力について(宮城県気仙沼市)
バスケットボールの勉強会(宮城県気仙沼市)レポート(2016/6/11)
気仙沼バスケットボールクラブ
バスケの勉強会への協力について(宮城県気仙沼市)
バスケットボールの勉強会(宮城県気仙沼市)レポート(2016/6/11)